Wednesday, December 11, 2019

ターミネーターファンなら、サラ・コナー クロニクルズを見るべき理由


サラ・コナークロニクルズは一度は見るべき

サラ・コナー クロニクルズ。私が思うに、あまりに不当な評価をされている作品の一つです。その評価ゆえに食わず嫌いで見ていないターミネーターファンもいるのではないかと思います(私もその一人でした)。しかしそれではあまりにもったいない。

この作品は引き伸ばしと、打ち切りという2つの悲運に見舞われました。確かに評価が低くなるポイントもわかります。手放しで面白いとは言えない作品です。ですがサラ・コナークロニクルズはターミネーターの世界を広げる可能性を秘めた作品です。ターミネーター好きなら一度は見ることをおすすめします。

シュワルツェネッガーの呪縛

ターミネーターにはシュワルツェネッガーが必要だ、という呪縛(?)があるじゃないですか。そのせいで、4もジェネシスもニューフェイトも色々知恵を絞って、頑張ったわけです。結果としてそれが上手くいっているのかどうなのかという問題は置いておいてね。

サラ・コナー クロニクルズはその呪縛を解き放っているのではないかと思うのですよ。その点で、もっと評価されるべきです。ターミネーターにシュワルツェネッガーが必要という人は、サラ・コナークロニクルズのファーストシーズンだけでも見てみるといいです。なんの問題もありません。

さらに、サラ・コナーはリンダ・ハミルトンじゃないとダメだ、という意見もありますが、それも同様です。ジョン・コナーについては3の配役でがっかりした人もいるかもしれません。それについてもサラ・コナークロニクルズの配役はこれ以上なく素晴らしいです。これはレナ・ヘディとトーマス・デッカーの力量もあるとは思いますが。とりあえず言いたいことは、ターミネーターはオリジナル俳優じゃなくても成り立つということです。

美少女ターミネーター、キャメロン

サラ・コナークロニクルズの押しポイントの第一は、なんといってもサマー・グロー演じる美少女ターミネーターのキャメロンでしょう。逆にその設定の安易さから毛嫌いしてしまう人がいるかもしれませんが、この美少女ターミネーターの設定はちゃんと成り立っています。

ターミネーター2でもありましたが、機械ゆえの要領の悪さみたいなところ。例えばジョンがT-800に「人を殺さないと約束して」と言い、「わかった」と言ったそばから、警備員の足を撃ち、「殺してはいない」と言うやつ。そういう場面が随所に出てきます。これが面白い。シュワルツェネッガーみたいなおっさんではなく、サマー・グローみたいなかわいい娘がすることにより、いっそうポンコツ(?)具合に面白味が加わる・・・というか、赤ちゃんがヨチヨチ歩いて、ぽてっと転んだら笑うでしょ。そういう感覚もあると思うんですよね。

私が一番好きなのは、家で少し手を広げてじっとたっている場面。通りかかったジョンが「何してるの」と聞くと「ここが家のちょうど中心になっている」と答えるやつです。ぜひ映像でご確認ください。

人類の救世主、ジョン・コナーの日常

ターミネーター2の時点で子供だったジョンが高校生になっています。サラから「お前は人類の救世主だ」とけしかけられているが、まだその自覚はない状態です。そしてこの時期にありがちですが、少し反抗期に入っています。それに対して母親は過保護ぎみ。そりゃそうでしょう。人類の未来を守る抵抗軍のリーダーなのですから。もちろん普通の母親としての愛情もあります。その辺の日常と非日常のギャップが面白いです。

「学校に行きなさい」とサラにしかられたり、学校の宿題をキャメロンにやらせていたのがばれて、サラに怒られたりする人類の救世主ジョン・コナーというのも、なかなかシュールで面白かったと思います。

ジョン・コナーの成長物語

ジョン・コナーの成長物語としてもなかなか良いです。シーズン1の時点では庇護される存在だったジョン・コナーですが、シーズン2にかけての事件によって自立していきます。その他サラの意見を押し切って、自分の意見を通すという場面も出てきました。そういう普通の子供と人類の救世主との間をつなぐエピソードは絶対に必要ですね。ターミネーター3でも少し描かれていましたが、それだとあまりにも薄い。その点でもこのサラ・コナークロニクルズは必要な作品だと思います。

また未来のジョン・コナーについても示唆されています。未来のジョン・コナーはほとんど人前に姿を現さず、いつもターミネーターをそばに置いている。それに対して、抵抗軍の中でも「人間よりも機械の方が信頼できるのか?」と不満が出てきている。とはいえジョンの作戦は成功するので表立っては反抗できない、みたいな話。ジョンがターミネーターをそばに置くことになる原因の一つは、キャメロンにあるのだろうことは、うっすらと描かれているのですが、もっとはっきりとした形で描いてもらいたかった。この辺設定としては面白いので、もう少し突っ込んだところまで見たかったと思います。

サラ・コナークロニクルズの残念な点

私が思うこの作品で残念な点は一つだけです。結末が急展開過ぎたことです。結末の内容については賛否両論ありますが、私はこれはこれでありかと思います。ただ、圧倒的に説明不足。後でいろいろなサイトを見て、そういうことが言いたかったのかと思うことが山ほど出てきます。真の敵が現れるあたりからはシーズン3にして、丁寧に描いて欲しかったというのが私の願いですが、もう遅い・・・ですよね。

引き伸ばしと打ち切りというダブルパンチで、おそらく制作陣としては納得いくものが作れなかったのではないかと思われる悲運のターミネーター作品、サラ・コナークロニクルズ。結末の性急さを除けば、私はとても面白い作品だと思います。

Wednesday, December 4, 2019

ターミネーターニューフェイト 感想(たぶんネタバレなし)


ターミネーターニューフェイトを見てきました。2時間飽きることなく、面白く見ることができました。でもやはり期待が高かった分、色々思うこともあります。

REV9が工場にやって来て女の子(ダニ)に襲いかかり、それに対して強化人間のグレースが対抗する。ダニと兄貴はおろおろと逃げ惑うばかり。その後のワゴンとショベルカー(?)のカーチェイスといった定番の流れ。この辺はハラハラでなかなかの迫力です。

途中のお涙頂戴的な展開はあまり好きではないのですが、それなりに納得させられたかな。かなり考えたんだろうなぁとは思いました。

人間(?)チームが強い。普通にREV9に対抗している。私がターミネーターに期待しているのは、1のときの絶望感なんです。それが薄かったかな。途中の戦いでは、T800とグレース、そしてサラの三人がよってたかってREV9をいじめているようにも見えました。

あとグレースは女性なんですよね。予告を見たときは男性だと思っていました。というかダニを守る役は男性の方が良くないですか? バランス的に。人間(?)チームの4人のうちの3人が女性になるよりは、2-2の方が良いと思うんですけれど。さらに言えばグレースが短髪ですから、一見男性に見えるんですよね。何らかの意図があって女性にしたいのならば髪はロングにして、わかりやすく女性にしてもらわないと。いやこれはどうでもいいか。

ターミネーターはサラ・コナーの物語だ、と製作側はいっていましたが、わたしはそれと同時にジョンコナーの物語でもあると思っていたんですね。ですので、文字通りニューフェイトとなってしまって残念です。サラコナークロニクルズの最初のころの展開を期待していました。サラに守られていたジョンが徐々に自立していくみたいな展開ですね。

シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンの出演がこの映画のセールスポイントのひとつでしたが、それなら強化人間のグレースは要らなかったように感じるし、むしろシュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンなしで、グレースだけでよかったのではないかとも思いました。ジョンがターミネーターに追われているのと同時に、実は別の場所でこんなことも起こっていました・・・みたいな。そして、それらの物語ががぐるっと回って最後に繋がるみたいな展開になれば、熱くないですかね。

結局シリーズ物は、ファン一人一人に理想の展開があって、そこからずれると残念に感じてしまうのです。全員を納得させる展開などあるわけないのですから、評価を保ち続けるのは難しいですよね。

単品の映画としてはとても楽しめました。でも最高かといわれると、そこまでではないという感じです。というかこの流れで続編を作るの? そうなると次回作も絶対に映画館で・・・となるかなぁ?

Tuesday, November 19, 2019

グレイテストショーマン 感想


評価★★★★☆
なかなかの迫力で面白かった。ですが、ラ・ラ・ランドよりは少し物足りない感じがあったかなぁ。実在する興行師P.T.バーナムを描いた映画です。

二人の子供がかわいい。奥さんが健気。序盤の屋上で洗濯物を干す場所だったと思うのですが、そこで描かれる家族の絆みたいなやつが、グッときます。貧乏の仕立て屋の息子のサクセスストーリーで、後味が良い映画です。

ただ、全体的に説明不足というか、上昇志向の強いバーナムが徐々にダークサイドに落ちていく感じとか、そういうのがもっと描かれていたらなぁとか、サーカスの一人一人のことをもっと詳しく知りたいなぁとか思いました。サーカス全体の躍動感は確かにすごかったですが、髭の女性やチビッ子大人の人なんかはソロパートをあげてもよかったんじゃないかなぁ。

あとパートナーの小説家でしたっけ、その印象が薄いし、彼の恋愛についてのくだりがありましたが、いまいち感情移入できなかった。批評家の人も敵役として登場してきて、のちに味方になるのかと思わせて、なんかよく分からないことになりましたしね。

もちろんミュージカルなので、歌唱パートが多く、その分状況説明が不足したり、ストーリーを丁寧に前に進める時間がなかったりしたのではないかと思います。難しいところですね。

ラ・ラ・ランドではエピローグで、自分の内面に心を向けさせられましたが、このグレイテストショーマンではそんなことはありませんでした。家族の話も少しありましたけど、軽いアクセント程度。何かを考えさせられたりすることはなく、ただただ映像と音楽の大迫力に圧倒されました。なんかよくわからないけどすごかったなという感じですね。


Sunday, November 17, 2019

ズートピア 感想


評価 ★★★☆☆
擬人化系の映画は苦手でしたが、面白く見ることができました。まず主人公のジュディがかわいいです。少しリアルなのでちょっと気持ち悪いな、と思っていましたがすぐに慣れます。シュガーラッシュのヴァネロペと同じニャッとする表情がいいですね。

あとは小さいときに怯えて鼻をヒクヒクさせるところが面白い。ジュディがズートピアに到着したときのズートピアの様子も良かった。ハムスターの出勤やキリンにジュースを渡す装置もいい。ああいうのがもっと見たかったですね。少し短かったと思います。

小さくて弱いウサギが、嫌われ者のキツネと協力して問題を解決するという内容。これ自体はよくある話でいいのですが、それに人種問題を絡めているのがちょっと説教臭かったという印象。肉食動物と草食動物の対立は要らなかったかな。それよりトムとジェリーのように、ネコがネズミをいじめるけれど、ネズミの方が賢くて一枚上手みたいな、そういう動物あるある(?)みたいな方が良かったと思う。あと幼い頃いじめられていたキツネと和解するシーンがあっさりしすぎ、あそこはもっと感動的にいかないと。

意外な犯人みたいなのも要らなかった。署長(?)が嫌なやつ過ぎ。あいつが犯人でいいやん。あれ、思ったより文句が出てくるぞ。

面白く観ることができましたが、後で思い返すとなんかしっくり来ないことがポロポロ出てくる映画でしたね。でもこれは2はあるでしょう。その2に期待です。


ゴールデンウィークに見た映画ランキング

6位 チャイルド・プレイ~チャッキーの狂気病棟~
評価★★☆☆☆
前作の「誕生の秘密」 はまぁまぁだったのですが、これは・・・雰囲気は良かったんですけど、ストーリーがむちゃくちゃじゃない?


5位 TIME
評価★★★☆☆
ふつうですね。・・・考えさせられる映画のようで、そうでもなかった・・・。吹き替えがひどいと評判でしたが、アホっぽさが出ていて、逆に良いんじゃないかとも思ったりしました。


4位 きっとうまくいく
評価★★★☆☆
主役のやつが少し鼻につく。もっと飄々としていたら、いいキャラだったと思う。途中の出来事も「それは自業自得やろー」となることばっかり。とはいえ最後はなんかいい話だったなぁという感じにはなりました。

3位 ファイトクラブ
評価★★★☆☆
ブラッド・ピットが格好いいのは確か。トリック的なやつは途中で分かった。似たような映画が色々ありますよね。最後のシーンがすごいという人がいますが、私は良く分からなかった。まぁ、ブラッド・ピットが格好いいという映画。

2位 ゴーンガール
評価★★★★
主役の女優さんの演技が面白い。完璧な人間かと思うと、少し抜けていて、かわいらしい面もありながら、サイコパス。そんな印象がころころ変わる人物をしっかり演じてくれているように思いました。ストーリーも面白かったですよ。無理やりやなぁと思うこともありましたが・・・

1位 ドントブリーズ
評価★★★★★
いやー、怖かった。驚かす系の怖さもちょこちょこありますが、心理的にやばいやばい・・・という怖さがしっかり描かれていたように感じます。最後のもやっとした終わり方も、あれしかないという感じですね。

LIFE! 感想

評価★★★☆☆

雑誌の表紙に使う写真のネガが見つからないことに気づいた主人公が、そのネガを求めて・・・という映画。さえない主人公が成長していく様子が、うまく描かれていたかなと思います。

「さんざん冒険して、ネガなんてものは最初から存在しなかった。この冒険の経験こそが宝物だ!」みたいなオチかと思いながら見ていたのですが、そんなことはなく、写真のネガはちゃんと見つかって、そこに写っていたものも納得いくものでした。後味はとても良いです。

とはいえ不満に思うところもいろいろあります。主人公の最初がぼんくら過ぎ。写真家の人に認められているのであれば、やるときはやるみたいなところはあっても良かったのでは? 女性に対して奥手でフェイスブックで言う「いいね」すら押すのに躊躇してしまう人だったのが、事件(?)が起きた瞬間に普通にその女性に話しかけているのもどうかと。

あと主人公が好意を寄せるその女性が、それほど魅力的でないように感じました。まぁこれは好みの問題もありますね。

一歩踏み出してみよう。そうすれば人生が変わる! というメッセージが込められた映画ですが、正直その点はあまりピンときませんでした。途中の冒険があまりに荒唐無稽でしたので、こんなことできるわけないやろーというのが先に立ちます。

そういう無茶苦茶な山場があったのですが、最後はごくごく普通の日常で締めており、見終わった後はとてもさわやかな気分になります。何度も繰り返し見ようという気にはなりませんが、見ておいて良かったなと思える映画でした。

ラ・ラ・ランド 感想

評価★★★★☆
ララランドは不思議な映画です。話の筋だけで言えば、すぐに終わります。ありきたりのラブストーリーです。ラブストーリーですが、決して恋人同士で観てはいけません。その理由はまた後程書きます。あとは年齢を重ねてから観た方がいいかもしれません。この理由も後程。ミュージカルなので、その辺で好き嫌いが別れるかもしれませんね。色々なものを詰め込んだお菓子箱のような映画です。

まず表にあるのはラブストーリー。喧嘩のシーンが良かった。あれはリアルでしたね。こちらが特に気にしていなければどうということもない会話。むしろ相手を気遣ってのものなのに、ほんの少しのわだかまりがあって、相手の言葉の端にそのわだかまりが掠めるのに気付いてしまう。それによって会話のレールが少しずれてしまう。お互いがちょっと不味いなと感じ、修正しようとするも、ボタンの掛け違いになって、どんどんおかしな方向に進んでしまう。で、結果怒鳴りあい。

「夢を諦めないで!」という応援であったり、逆に「夢が叶わなくっても、それはそれでいいじゃない」という慰め(?)だったり、観る人によってで捉え方が変わってくる。最初に恋人同士で観てはいけないと書きましたが、この映画は自分の過去を振り返らされます。恋愛に関しても、ありますよね。あのときあの人と別れなかったらとか、あの人と付き合っていたらどうなっていたのかとか。最後のシーンでそれを思わされてしまいます。最後のシーンで画面が流れていますが、見ているのはきれいな映像。そして美しい音楽に気持ちの半分を自分の内面に向かわせてしまいます。目は画面を向いていても心は自分のことに思いを馳せてしまう。

では恋人同士で観るのはまずいとして、誰と観るのが良いのでしょうか。友達同士? いやこの映画は一人でこっそり観るのがいいのではないでしょうか。通常映画は、特にラブストーリーは登場人物の誰かに感情移入して、「かわいそうだ」とか、「しあわせになってよかった」などと感じるものでしょう。あるいは話の筋に酔いしれるみたいな。それがこの映画では自分の人生を思い返して、いろいろ振り返らされてしまうのです。そのため、ある程度経験を積んだ人が観るといろいろ思うことも出てくるのではないかと思います。

映画の画面を観るのではなく、自分の内面を観るという不思議な感覚を味わえた映画でした。

ナイト&デイ 感想

評価★★★☆☆
トム・クルーズが格好いいのはもちろんですが、キャメロン・ディアスが面白いです。あんまり好きな顔ではないのですが、時にものすごく美人に見えるのがすごい。

組織を裏切った凄腕スパイとそれに巻き込まれる一般女性という内容。トイレで化粧直しをしているあいだ、トム・クルーズが闘う描写があるのですが、トイレの中ののんきな様子と外のアクションとの対比が面白い。特に外で闘う二人が揉み合ってトイレのドアにぶつかるのですが、その「ドンドン」という衝撃に対して「入ってますよー」というとぼけた返事が面白かったですね。あとはカーアクションはまぁまぁかな。緊迫した場面と、とぼけた会話というのが全編を通して続きます。

逆に不満なのは展開の安易さ。特に敵に捕まった後の脱出シーン。あれはないわー。病院からの脱出シーンも同様。でもこれはさっきの敵からの脱出シーンと対応させているのだから、しかたないのか。あとは最後のおち。うーん、あれはまぁあんなもんかとも思いますが、でもそれで「おー、そうくるか!」とはならないでしょう。誰かが言っていましたがこの映画は、女性がトム・クルーズを見てカッコいいー、キャメロン羨ましいー、となるおしゃれ映画であります。ターミネーターやダイハード的な面白さを求めて見ちゃうと、ちょっとがっかりするかもしれませんね。

とはいえ、2時間退屈せず見ることができましたし、頭を空っぽにして見る映画としては良いのではないかとも思います。ということで、評価は星三つです。

プラダを着た悪魔 感想

評価★★★★☆

おしゃれ映画ですね。ファッション雑誌が舞台なので当たり前ですけれど。ダサい(?)アン・ハサウェィが、みるみるおしゃれになっていく様子を見て、「私もああなりたい~♪ ブランドの服、買ってちょうだい」となってしまう映画でもあります。

でも実際、服によって雰囲気がガラッと変わりますね。あまりファッションに興味がなかったのですが、何か恐ろしいものを見せられた感じもします。アン・ハサウェィが最初に着ていたコートやセルリアンのセーターも最初は特に違和感を感じませんでしたが、後の変身を見ると、陰口をたたかれる程度にダサかったというのがわかりました。そういった意味ではファッションの啓蒙映画だともいえるでしょう。

ストーリーに関してはまぁ色々あります。嵐の日に飛行機で帰らせろや、ハリーポッターの発売されていない原稿を読ませろ、という無理難題。あとステーキのくだりはやりすぎでしょう。後半で実は悲しみを抱えているんですよ、なんて言われても全然同情できませんよ。

あとは、違う男に一瞬乗り換えたところ。あの辺、軽いなぁ。そりゃ、友達も愛想をつかしますよね。めでたしめでたしという結末のようになっていますが、なにかもやっとしたものを感じないわけにはいきません。

エミリー・ブラントが演じているのがエミリーという第一秘書なのですが、これはたまたまなんですかね? 好きな女優さんなんですが、あの化粧はどうしたものか。まぁ、アン・ハサウェィの比較対象としてあまりイケ過ぎてもいけないというところでしょうか。

メリル・ストリープが演じる、弱った時のおばあさん感もすごい。これは演技もそうなんでしょうけれど、キャリアウーマン時のメイクが素晴らしいってことでもありますね。アカデミー賞の主演女優賞を取ったんでしたっけ?いろいろ書きましたが、結構面白かったです。頭空っぽにして見ることができる映画としてはかなり良いのではないでしょうか。

ジャッカルの日 感想


評価 ★★★★☆

登場人物それぞれにしっかりとしたバックグラウンドがあるのが良い。そしてそれぞれの人物の物語における役割が非常に考えつくされていて面白い。

中でもOASのボディガード、コワルスキーの存在がすばらしい。最初コワルスキーはロダンのボディガードをしていて、ロダンのもとに訪れるカッソンとモンクレアの腕を締め上げる。このあたりややコミカルに描かれており、コワルスキーの役割はこの小説のやや重々しい雰囲気の中でのちょっとした息継ぎのようなものなのかと思われる。

ところが実はそうではなくてそのあとジャッカルが、カッソンとモンクレアがつかまるまでその存在に気付かなかったコワルスキーの存在に気付かせることで、ジャッカルの能力の高さ、つまり、カッソン・モンクレア<コワルスキー<ジャッカル、ということを示すことになる。なるほどジャッカルのすごさを表現するためにコワルスキーという人物を出したのかと思っていたら、さらにその後そのコワルスキーが物語の中で重要な役割を果たす。

このコワルスキーほど物語中で重層的に役割を果たす人物はいないが、その他にも出てくる人物人物にそれぞれ過去があり、性格がある。何よりすごいのは内面描写を極力避けながら、その行動と言葉から彼らの性格を滲み出させている点だ。そして内面描写がほとんど無いことから物語のスピード感はたまらなく速い。割と分量はあるが一気に読み進めることができるのではないだろうか?

途中ルベルの視点のパートでやや停滞しかける場面もあるような気がしないでもないが、最後の最後まで緊張感を保ち続け読ませられる傑作であります。